沖縄県の海洋深層水(Deep Ocean Water)は、深い海洋から汲み上げられる冷たい水で、栄養塩類やミネラルが豊富であることが特徴です。これは太陽光が届かない深海層にあるため、表層水と比較して微生物や汚染物質の少ない清浄な水として知られています。
沖縄では、1980年代から海洋深層水の利用に関する実験が始まりました。最初の研究は水産分野からスタートし、ウミブドウや魚介類の養殖に用いることで、その生育効果や生産性の向上が確認されました。その後、農業分野への利用も検討され、1990年代から土壌改良や植物の成長促進に深層水を使う試験が進められました。
農業への利用実験では、トマトやレタス、ゴーヤなどの沖縄の代表的な作物に深層水を使用することで、生育の促進や収穫量の増加が得られるかが試されました。これらの実験を通じて、海洋深層水を希釈して灌漑用水に用いることで作物の品質向上や病害の抑制に寄与することが確認されました。また、海洋深層水を肥料成分として使うことで、作物の味や栄養価の向上も期待されています。こうした繰り返しの実験により、沖縄では海洋深層水の農業利用が進み、持続可能な農業や地域活性化の手段として注目されています。