ドローンで農薬散布するには?許可や条件などを徹底解説

一般的にドローンを飛行させるケースでは映像作品の撮影や災害現場の探索、建築物の点検などを連想されるかと思いますが、実は農業でもドローンは活用されています。

なかでも「農薬散布」は農業において代表的なドローンの活用方法といえます。

導入当初は水稲を中心に実施されていましたが、ドローン本体の改良が進みマルチコプター型農業用ドローンが普及したことにより、畑作物への利用も増えてきています。

農薬サンプルするために必要な許可

農業散布であろうともドローンを飛行させる場合は、「航空法」の規制を守ったうえで飛行させなければなりません。航空法には「飛行禁止空域」と「飛行の方法」が規制されています。

【飛行禁止空域】

飛行禁止空域は次の4つ。

  • 空港等の周辺の上空の空域
  • 緊急用務空域
  • 150m以上の高さの空域
  • 人口集中地区の上空

【飛行の方法】

飛行の方法は8つの項目で規制されています。

  1. 飲酒時の飛行禁止
  2. 危険な飛行禁止
  3. 夜間での飛行禁止
  4. 目視外飛行
  5. 距離の確保(30m以上)
  6. 催し場所での飛行禁止
  7. 危険物輸送の禁止
  8. 物件投下の禁止

上記であげた航空法に引っかかる場合は、国土交通大臣の許可・承認が必要になります。また、農業散布の場合において飛行の方法で許可が必要となる項目は「危険物の輸送」と「物件投下」にあたります。

このほかにもモニターを見ながら飛行させる場合は「目視外飛行」の許可が必要になりますし、所有している田畑が人や建物と隣接している場合は「距離の確保(30m以上)」も申請しなければなりません。

農業散布で使用するドローンは基本的に200g以上の大型ドローンを飛行させるため、必ず国土交通省の許可・承認を取得してから飛行させる必要があります。

ドローンで農薬散布するメリット

従来の方法で行うよりもドローンで農薬散布する方がたくさんのメリットがあります。

  • 作業の効率化・簡略化
  • 従来の重機では難しかった場所への散布
  • コストダウン
  • 人体への影響を最小限にできる

作業の効率化・簡略化

従来の散布方法は主に人力で作業する農家がほとんどでした。そのため、時間もかかり重労働になっていることが問題になっていました。

しかし、農業用ドローンの登場により地上からではなく上空から広範囲にわたって農薬を散布できるようになり散布時間を大幅に減らすことに成功しました。

従来の重機では難しかった場所への散布

斜面が急な場所などへの農薬散布は従来の重機は使用できずに人力で行っていました。しかし、上空から散布できるドローンであればなにも問題なく作業することが可能となりました。

危険を冒してまで人力で行う必要がなくなったのは、農業従事者にとってはとても大きなメリットといえるでしょう。

コストダウン

農薬散布には人力以外にも「有人ヘリコプター」を利用しているケースもあります。その場合、ヘリコプターの購入となると1,000万円以上、作業を委託する場合でも年間にすると数百万ほどの費用がかかっていました。

しかし、農業用ドローンであれば初期費用は100万円ほどかかりますが、長期的に使用することを考えるとコストダウンすることが可能です。

ただし、農業用ドローンの利用を考えている人は「散布する面積」を考慮してください。散布する面積が広い場合、農業用ドローンを使用することで逆にコストが上がるケースもあります。

広大な面積を散布する場合は専門業者に依頼したほうがコストを抑えられる場合があるため注意してください。

人体への影響を最小限にできる

人力で農薬散布している限り、散布中に吸い込んでしまうこともありますよね。いくら安全検査をクリアした農薬を使用しているといっても、人体への影響がまったくないわけではありません。

その点、農業用ドローンであれば遠隔操作によって散布できるため、人力よりも人体への影響を最小限にすることができます。

ドローンで農薬散布するデメリット

メリットがある一方、農業用ドローンを使用することにはデメリットもあります。

  • 初期費用
  • 操縦技術の習得・IT知識の理解
  • 使用許可の申請

初期費用

とても便利で今すぐにでも購入を検討したくなる農業用ドローンですが、初期費用がかかってしまうところがデメリットでしょう。

また、購入して使用していくなかで「メンテナンス」もかかせません。部品の購入や修理など購入費以外にもコストはかかってしまいます。

しかし、長期スパンでの利用であれば耐久性にも優れている点などを考慮し、友人ヘリコプターなどよりははるかに費用を抑えることができます。

操縦技術の習得・IT知識の理解

ドローンを自分で操縦するためには当然技術が必要になります。また、操縦技術だけでなくドローンに関する知識も併せて必要になります。

若者離れが顕著な農業において、高齢者が最新のIT知識を理解する必要があるのは少々ハードルが高いかもしれません。

しかし、現在はドローンスクールや専門のサポート体制がしっかりしていることもあり、以前よりもドローンに対するハードルは下がっているといえるでしょう。

使用許可の申請

農業で使用するドローンであっても「航空法」を守ったうえで飛行させなければなりません。

農薬散布となれば飛行形態は「危険物輸送」と「物件投下」に該当するため、飛行させる前に国土交通省の許可・承認が必要になります

散布できる農薬に規制があります

ドローンで散布できる農薬は農林水産省によって規制されています。

これは農薬取締法に基づき登録されており、「作物名」や「使用時期」、「使用料」や「使用方法」など細かく定められています。ただし、農薬が登録されていても使用基準以外の方法で使用することは禁止されているので注意してください。

詳細を知りたい方は、一般財団法人農林水産航空協会の「産業用無人航空機用農薬」で簡単に調べることができますよ。

農業用ドローンは補助金の対象

従事者は農業用ドローンの購入または認定資格などの費用の一部を助成する「補助金制度」を利用することができます。

これは生産性を高めるためや新たな農業ビジネスの発展のため、国や地方公共団体が行っており原則返金する必要がない制度です。

補助金制度のなかには「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」や「ものづくり補助金」、新型コロナウィルスの影響で新設された「経営継続補助金」などがあります。

農薬散布ができるドローン

DJI AGRAS MG-1S ADVANCED

ドローンシェア率7割を誇るDJIから発売されている農業用ドローンです。

8台のローターを搭載しており推進力と制御アルゴリズムを兼ね備えたドローン。仮に飛行中にプロペラやモーター、アームが故障しても飛行の安全性は確保されています。

ヘリオスアグリ10

東京ドローンプラスから発売されている農業ドローン「ヘリオスアグリ10」。

1ヘクタールの広さを約10分で散布することができる優れものです。購入時には農薬散布に必要なものがすべてセットになっており、現地で講習も行ってくれると至れり尽くせりです。

はじめてドローンを操作する方は、ベテランの講師が実際に飛行させる農地まで伺ってくれ直接指導してくれます。